「楳図かずお」と曽爾高原のお亀池伝説

楳図さんは、教師の息子として和歌山県高野山に生まれ、
小学校4年生まで奈良吉野の山奥を転々として育ちました。

恐怖マンガの第一人者として、全国的に知られることになった作品「へび女」
父から子守唄がわりに聞いていた奈良の民話や怪奇話、
特に「おかめが池」が印象的で、これがのちの「へび女」の題材にもなっているそうです。

前日ご紹介した曽爾高原のほぼ中央に、数多くの伝説の残るお亀池があります。


 むかしむかし、お亀という女性が伊勢の国の太良村から太良路村へお嫁にきました。
年齢は、18歳で本当に美しい女性でありました。
お亀は毎朝、家の裏にある井戸で水鏡を見て化粧していました。
この井戸水は深く水は亀山の池からきていました。
しぼらくするとお亀は、毎晩どこかへ出
ていき朝になってから帰ってくるようになりました。
そして裏口に泥のついた草履(ぞうり)がぬいでありました。
その草履を見て夫は、お亀に聞くと、
「子供が生まれますように」とお祈りにいっているのだとこたえました。
そのかいあって、夫婦の間に子供が生まれました。
お亀は、「私の仕事は終わりました。おひまをください」と実家へ帰りました。
子どもは、お腹をへらすと大きな声で泣きます。
また、夜泣きをします。
夫は、その子どもをだかえ、乳を飲ましてもらうため、お亀の実家の方へ出かけました。
「お亀よ、お亀よ」とよびながら池のあたりまできますと、お亀が迎えにきてくれました。
そして乳を子どもに飲ませて「もう、明日からは来ないでください」と夫に伝え実家に帰っていきました。
やはり次の日、子どもが夜泣きをしますのでまた子どもを連れて池のあたりまで行くと、
お亀が池の中から現れたのでありました。
「もう来ないでくださいといったでしょう。どうしてくるのですか?」
と怒りなから大蛇に化けて大口を開けておそいかかって来るではありませんか。
夫は子どもをだきかかえ一目さんに逃げました。

岩城千晴 著「ぬるべの昔ばなし」より